〝何をやっても髪が生えない〟という人に限って、生活スタイルが乱れていたりするのですが、実は髪にはデンタルケアも大きく関係していて現代人の5人に1人と多い睡眠時無呼吸症候群も関係しています。
今回はあまり知られていない歯周病と薄毛、いびきと薄毛について発毛診断士の久田篤が解説していきます。
目次
歯周病から薄毛になる?
髪や頭皮にばかりに気を取られていませんか? 私は、髪も歯も爪も、人間の体で生えているパーツは全て、正しくケアしないと失われたり、悪くなったりすると考えています。
「薄毛と歯周病なんて関係ないのでは?」と思う人もいらっしゃるかもしれません。
実は口内環境と薄毛には、切っても切れない縁があるのです。
その縁とは、「口内で増殖した細菌」そして「血液」です。
もともと口内にはものすごい数の細菌がいますが、虫歯や歯周病になると、口内の細菌 はさらに増殖します。
この細菌は、歯周病などを起こした部分から、いとも簡単に血管→ 体内に入り込み、長く生き続けるということがわかっています。これはつまり、あなたの 全身を流れる血液に、口内細菌という毒素が混ざるということです。
髪には「血液」「酸素」「栄養」「デトックス」が重要になります。
このうち全身の毒素のデトックスは、薄毛予防の大前提となるものでもあります。なぜなら 発毛体質づくりには当然〝健康な体〟が欠かせないからです。細菌が出す毒素は体に様々な悪影響を及ぼします。その一つが薄毛という訳です。
毒素が血液から毛根にまで回れば、それが原因でヘアサイクルが乱れたり、血液に充分な栄養が行き渡らなくなり、薄毛につながるという仕組みです。
このように、口腔のケアを怠ることによって歯も、そして生えてくるべき髪も失うことになりかねないのです。
さらに、歯周病は糖尿病とも密接な関係があると言われています。糖尿病患者は歯周病 も抱えている、というケースが多いことも事実です。
免疫力が通常であれば、歯周病の細菌(正確には「グラム陰性細菌」といい、実は身の回りに存在するありふれた細菌です)自体は長く生きることはできませんが、細菌の細胞膜にある内毒素の「エンドキシン」という毒素は体内に残ります。
このエンドキシンが肝臓や脂肪組織に作用すると、インスリンの働きを抑える「TNF-α」という物質を多く分泌します。この物質によりインスリンが正常に働かなくなることで、糖尿病のリスクが上がると言われています。
糖尿病になると体内では糖化という化学反応が起こりやすくなり、血流も滞りがちになり、これも薄毛の大きな原因となります。
早めのデンタルケアが薄毛予防につながる
薄毛ケアもしっかりしているし、生活習慣やストレスをためすぎないなど気を付けているのに、薄毛が気になるという人はいませんか?
もし薄毛と合わせて口内環境が気になるという場合は、早めに歯科検診で歯周病菌の検査をすることをおすすめします。
数カ月おきに歯石取りなどのデンタルケアをすることにより歯周病予防にもなりますし、薄毛予防にもなります。
一度歯周病になりそれが進行してしまうと、セルフケアだけでは治すことが難しくなります。
口内疾患は歯周病、薄毛、糖尿病だけでなく、心筋梗塞や動脈硬化などにも関係していると言われています。
体の健康を維持することは、髪の毛の健康にもつながります。
〝歯と薄毛、抜け毛の関係性がピンとこない〟と思わないで、抜け毛や薄毛が気に始めたら髪の毛のケアと併せて口 内のケアも行うようにしましょう。
髪には歯のケア大切ですが良質な睡眠も重要です。
疲れた時にたまにイビキをして寝ているのはいいのですが、イビキがうるさい。
そしてイビキが止まったと思ったら呼吸をしばらくしていない。
ピタッと寝息がしなくなり、寝息が数十秒から 1分くらい止まっている。翌朝、きちんと寝たはずが眠くて仕方ない。
これはもしかしたら、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
男性、女性に関係なく、軽症患者や自覚症状のない予備軍も含めると、なんと日本人の5人に1人が患っていると言われているものです。
睡眠時無呼吸症候群は、髪にも影響します。睡眠時無呼吸症候群になると、AGA(男性型脱毛症)が進行する可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の患者がED(勃起不全)になる確率が高いことについても、医学的な研究報告がなされています。
日本人は西洋人のように頭蓋骨が細長くはなく、丸くてどちらかというとスマートな形ではないですし、顎も小さいです。こうした骨格の影響もあり、日本人は睡眠時無呼吸症候群が非常に多いのです。また、メタボ体質の人にも多いようですので、若い時に比べて体重が5キロ以上増えた方や、最近運動不足で体が重いという方は、イビキに注意してみてください。
睡眠時無呼吸症候群と薄毛の関係性
イビキ(睡眠時無呼吸症候群)がAGAに直接的につながる明確な原因はまだ解明されていないのですが、研究医師から推測されているメカニズムとして、次のようなことが考えられています。
睡眠時無呼吸症候群になると、体内に酸素が取り込まれにくくなります。すると、酸素を全身に送る役割を担う血液の流れが悪くなり、体内の細胞や組織の活性化が進まなくなります。血流が鈍ることにより、毛髪にも充分な栄養素が届かなくなり、どんどん弱っていって、最終的には抜けてしまいます。
髪にとって必要な酸素や血液や栄養分が運ばれない状態では、いくら夜10時から深夜2時の成長ホルモンが活発に分泌する時間帯に就寝していても、負のスパイラルを起こしていると考えられる訳です。
また、血流の低下は、同時にホルモンバランスの乱れももたらします。
ホルモンバランスの乱れや血流不足は女性の薄毛にもつながりますし、AGAは男性ホルモンの作用によって起こる脱毛症の一種ですので、イビキがその原因の一つになっていても不思議はありません。
たかが睡眠とかイビキと侮ってはいけません。
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧症や動脈硬化の進行に伴う狭心症や心筋梗塞などの循環器系疾患、糖尿病などの代謝系疾患を招き、最悪の場合、突然死のリスクも高めてしまうという非常に怖いものなのです。
無呼吸の時は、つまり無意識に〝息を止めて〟寝ている状態です。それが無意識状態のままで苦しくなり、一気に酸素を取り入れようと呼吸し、血流と酸素が一気に流れる。
それを一晩に睡眠時何度も繰り返すのですから、血管や心臓に負担がかからない訳がありません。
睡眠時無呼吸症候群は内臓などの病気ではないので、医薬品による治療はできず、「睡眠 治療」を行います。
骨格や顎の形で睡眠時無呼吸症候群になる可能性が高いので、軽度であれば「マウスピ ース治療」(睡眠時にマウスピースを付けて寝る方法)を、中度以上の症状であれば「シーパップ治療」(睡眠時にシーパップを装着して寝る方法)があり ます。
メタボ体質であれば、ダイエットをして睡眠時の数値を計測してもらうなど睡眠外来のクリニックでの相談が必要になります。
イビキがうるさい、寝ている時に息をしていないと言われたり、きちんと寝たのに眠いという場合は薄毛予防だけでなく、生命を守るために睡眠クリニックに相談されることをおすすめします。